倉庫業として認められる最も重要な条件は、荷主から金銭の授受をもって物品の寄託を受けたかどうかという点にあります。つまり、荷主からの依頼に基づき有償で物品を倉庫保管するのが倉庫業です。しかし、営業倉庫としての条件を備えていても倉庫業としての許可が不要になるケースがあります。ここでは倉庫業の許可が不要になる例について説明していきます

 

倉庫業法における倉庫の基準とは

倉庫業法では、倉庫の定義を以下のように定めています。

 

物品の滅失若しくは損傷を防止するための工作物又は物品の滅失若しくは損傷を防止するための工作を施した土地若しくは水面であつて、物品の保管の用に供するものをいう。

※倉庫業法第一章第二条(定義)参考

 

通常概念的には、倉庫とは荷主から預かった物品を保管するための建物のことを指しますが、法的には「物品を保管するための建物・工作を施した土地や水面」も含まれます。関連法がある以上、倉庫として定義される建物は厳密な要件を満たしている必要があり、これをクリアし国土交通省に登録したものだけが、営業倉庫として利用可能なのです。

 

倉庫として認められるためには、たとえば、建築確認申請・消防法に則った消防設備の設置・保管する物品に適した保護性能基準を満たしていなければなりません。

 

倉庫業の許可が不要な具体的事例

一方、倉庫としての要件を満たしていても許可を必要としないケースが存在します。

 

運送契約に基づく一時的な物品保管場所

運送業者が一時的に荷物を保管し荷さばきなどを行う場合。港湾運送業者や貨物運送業者などの配送センターなどが該当する。

 

個人の手荷物などについて外出時の一時保管

手荷物預かり所やコインロッカーなどが該当する。

 

自転車や自動車などの一時的な保管

駐輪場や駐車場などが該当する。

 

金融機関による金融資産の一時的な預かり

有価証券や貴金属などの金融資産について、銀行などの金融機関が貸金庫などで保護預かりを行う場合が該当する。

 

特定の物品を保管あるいは加工などして第三者に譲渡する場合

  • 生け簀で魚を養殖することを目的とした魚の保管(飼育)。
  • ペットの遺体を預かり処理を行うための動物の保管(供養)。

 

物品を第三者から預かり洗濯あるいは修理などのために保管する場合

クリーニングや自動車工務店などの事業に付随する保管が該当する。

 

本人の物品を保管するための倉庫

寄託契約のない自社倉庫、自家倉庫などが該当する。

 

上記に該当する「保管」については、倉庫の定義を見たいしていたり金銭の授受を伴ったりしていても、倉庫業とはみなされないため許可は不要となります。

 

このように、仮に営業倉庫としての基準を満たしていたとしても、その活動実態が別のところにあると判断されるようなケースは、倉庫業としての活動実態がないと考えられます。したがって「寄与委託契約が存在しない」「本来目的のための一時的な保管である」といった場合が許可不要ケースに該当するでしょう

 

まとめ

倉庫業ではほとんどのケースで許可を要します。許可が不要なのはここで述べたような限定的なケースに限られるのが実情です。これから倉庫業の立ち上げを検討しようと考えている場合、取り扱う物品やサービスによって登録の要不要が変わってきます。このことを踏まえて、事業イメージはできるだけ明確にしておくことをおすすめします

 

自分ではどうしても登録が必要か不要か判断しかねるといった場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。会社立ち上げ業務を数多くサポートしてきた経験からいえば、より明確に設立イメージを描くことができるほど必要な業務が見えやすくなるため、たとえば倉庫業の登録の要不要に関しても判断しやすくなるはずです。当事務所ではヒアリングを重視していますので、まずは一緒にイメージの明確化を行ってみましょう