物流における倉庫業は、運送業との綿密な連携のなかでその特徴的な役割を果たしていくものです。運送業から引き継ぐ形で物品の入荷と保管を行い、さらに運送業へ出荷業務を手渡していくことで、スムーズな物流環境ができあがっていきます。ここでは、倉庫業と運送業の関わりについて説明していきます

 

倉庫業と運送業の境目とは

倉庫業と運送業は切っても切れない関係にありますが、貨物の運送業者が荷主の物品を一時的に倉庫し配送のスムーズ化を図ることがあります。倉庫業の範疇であるようにも思えますが、倉庫業では荷主から物品の寄託を受けて保管する前提があることを踏まえると、運送業者による保管についてはまた別の見方をすべきでしょう

 

具体的にいえば、運送業者が荷主の物品を一時的に保管するのは、寄託によるものではなく運送契約上の適切な行為として行っているにすぎません

 

倉庫業者による物品保管は運送業者による保管とは異なり、物品の保管を寄託する第三者(荷主)が存在します。荷主の意向で倉庫保管され入荷・出荷が行われる場合は、運送契約による一時保管ではなく倉庫業における寄託契約によるものだと判断できます。

 

倉庫業と運送業の特徴とは

物流として倉庫業と運送業を見た場合、両者は一連の役割を担う関連した事業のように思えますが、実はいずれも全く異なる性質を持っているのです。

 

倉庫業の特徴

倉庫業の一番の特徴は、国土交通省に対して登録を行い倉庫業法に則った営業を行う事業であるという点にあります。荷主から寄託を受けて物品の入荷・出荷・保管などを行うもので、倉庫施設や設備についても法に定められた基準を厳密に守っていなければなりません。

 

単に「倉庫」というスペースを貸しているのではなく、寄託を受けた物品の加工、ピッキングや受発注システムの管理にいたるまで、物流における倉庫部門としての機能を維持しながら、荷主から預かった物品の保管業務を遂行するのです

 

運送業の特徴

運送業とは、車両を用いて物品の輸送あるいは配送を行う業態をいいます。倉庫業が荷主から金銭を受け取り、寄託契約を交わすのと同様に、運送業でも料金を受けて特定の場所まで人や物品を運ぶのです。配送業や宅配業、バスやタクシーなども運送業のひとつの形です。

 

運送業の主目的はあくまでも輸送・配送にありますが、その業務工程で一時的に物品の保管が必要な場合は、自社の倉庫で物品を保管し中継地点として次の配送に向かうこともあります。ただし、この場合の倉庫は倉庫業における営業倉庫とは性質が全く異なります。

 

倉庫業と運送業の2つの許可取得について

自宅にいながら商品をネット注文することが当たり前の世の中では、運送業や倉庫業の存在はより重要になっていきます。従来の形としては、運送と倉庫は別業者が担い、それぞれ役割分担していましたが、商品配送の一元管理の観点からいっても、運送業と倉庫業の許可を両方とも取得し、自社で業務が完結できるような取り組みを進める企業もみられます

 

物流のニーズが高くなるほど、運送業者はより良いパフォーマンスを上げるためにさまざまな取り組みを進めています。再配達などの時間的ロス削減や倉庫管理や物流システムのデジタル化とその運用などが代表的な例です。パフォーマンスを上げるための策のひとつとして、運送業者が倉庫業の許可を取り業務のスムーズ化を図るケースが増えているのです。

 

まとめ

物流において運送業と倉庫業は切っても切れない関係性にあります。だからこそ、先に述べたように運送業者が倉庫業の許可を取ったり、倉庫業者が運送業の許可を取ったりして、物流というひとつの流れを自ら構築しようとする傾向が強くなってきたといえます。

 

当事務所でも同様の相談をたびたびお受けしていますので、運送業・倉庫業いずれかの許可申請を検討していたり、会社立ち上げに際して両方の許可を得ようと考えていたりする場合は、数多くのケースを取り扱ってきた当事務所までご相談いただけますと幸いです