倉庫業とは、寄託されたあらゆる物品を倉庫に保管したり加工や配送を行ったりして、「生産・流通・消費」の流れを作り上げていく事業のひとつです。ここでは、特に営業倉庫とよばれる倉庫業の種類と営業のための要件について説明していきます

 

営業倉庫における法の定め

倉庫には以下2種類があり、なかでも営業倉庫は物品を寄託した人・企業の利益を守る役割を持っています。同時に、その役割から国土交通省への登録が不可欠なのです。

 

  • 【自家倉庫】自社製品などの保管を目的とする
  • 【営業倉庫】他者の物品の預かりを目的とする

 

物品の保管や配送、加工工場としての機能など、営業倉庫が担う役目は実に幅広く、また公共性も高いといえます。このため、国に対する倉庫業の登録を怠った場合、無登録営業とみなされて「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」が科せられることもあります

 

倉庫業の種類と営業のための要件

営業倉庫は大きく「普通倉庫業」「冷蔵倉庫業」「水面倉庫業」の3種類に分けることができます。それぞれの特徴についてみていきましょう。

 

普通倉庫業

普通倉庫とは、法的な分類における以下の倉庫の総称です。

  • 一類
  • 二類
  • 三類
  • 野積
  • 貯蔵そう
  • 危険品倉庫

 

これら普通倉庫では、次に挙げるような分野の物品・貨物を補完します。

  • 農業関係
  • 鉱業(金属、原油や天然ガスなど)
  • 製造業(食品、繊維、化学工業、紙やパルプ、機械など)
  • 一般消費者の財産(家財道具、美術品、骨とう品など)

 

冷蔵倉庫業

法律上「8類」とよばれる、食肉や水産物、冷凍食品など10℃以下での保管が求められる貨物を保管します。

 

水面倉庫業

法律上「5類」とよばれる、原木などの物品を水面上で保管します。

 

倉庫業の用途地域

営業倉庫として営業を行うためには、倉庫の立地条件にも十分な注意が必要です。原則として住居地域(準住居地域を除く)には倉庫を建てることはできませんので、検討する場所が以下いずれかの用途地域かどうか、あらかじめよく確認することが大事です。

 

【倉庫建物の建築が可能な用途地域】

  • 準住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域
  • 工業専用地域

 

開発行為許可の有無

特に、市街化調整区域内に営業倉庫として使用する建物が建っている場合、その建物が開発行為許可をもっており倉庫業の営業を前提として建てられているものであることを事前に確認する必要があります。いわゆる違法建築物に該当する場合、当然ながら倉庫業を営むことはできませんし、開発行為許可をもたない建物であれば当該建物を倉庫業として登録することは非常に困難だといえるでしょう

 

完了検査の状況

同時に確認しなくてはならないのが、当該建物が建築基準法に基づく完了検査を実施しているかどうかという点です。建物は、その建築が完了した際に「図面通りに建築された建物かどうか」を確認する目的で完了検査を受けることになっています。万が一、完了検査が実施されていない建物だった場合は違法建築物となりますので、当然のこととして倉庫業登録を行うことができません。十分に注意しましょう。

 

倉庫管理主任者について

営業倉庫を営むには、1つの倉庫に対して1人の倉庫管理主任者を置く必要があります。ただし例外として、以下いずれかの条件に該当する場合は、2つ以上の倉庫に対し1人の倉庫管理主任者を置くことが認められる場合があります

 

倉庫管理主任者数の例外ケース

例外が認められるのは以下のいずれかに当てはまる場合です。

※国土交通省「倉庫業法施行規則等運用方針」参照

 

1.機能上一体の倉庫とみなされる複数の倉庫

※同じ敷地内に建つ複数倉庫の集まりや道路を挟んで複数の倉庫が存在するような場合であり、行われている業務が基本的に一体であると認められるものを指す。

 

2.同一都道府県内に存在する同一の営業所やその他の事業所が直接管理又は監督している複数の倉庫であって、それらの有効面積の合計値が国土交通大臣の定める値以下であるもの(10,000㎡以下)であるもの。

 

まとめ

営業倉庫としての登録申請を行う場合、申請対象となる倉庫の状態により確保すべき準備期間や手続きの難易度が変わってきます。時間の猶予がないなかでの申請は場合により厳しくなることも想定されますので、できるだけ早い段階で当事務所まで一度ご相談ください。建物の状態や倉庫業登録申請手続きの流れについて「見える化」していきましょう。